武蔵野台地と野川上流の谷が広がる国分寺市。

交通の便がよく、スーパーや商業施設にも困らない、利便性と自然がバランスよく融合した魅力的な町。人気と注目が集まるエリアの中心駅である国分寺駅を歩き、緑豊かな殿ヶ谷戸庭園を抜けると、自然食品や衣料品を扱う「カフェスロー」内に「nue by Totoya」の姿が現れます。

店頭から見えるショーケースと手作りの看板

「nue by Totoya」が目指す世界を実現するために

2021年1月13日にオープンをした「nue by Totoya」は、食品や生活用品を個包装せずに量り売りで販売する、ゼロウェイストを推進する店舗です。

ゴミが出ない暮らしを気持ちよくライフスタイルに馴染ませることで、シンプルで心地よい、持続可能な環境に配慮したライフスタイル確立を提案しています。

「訪れる人を楽しくゼロウェイストの世界に巻き込んでいきたいですね。」

そのように語るのは、「nue by Totoya」国分寺店、店長の井川恵太さん。

井川さんが「nue by Totoya」の一員になった理由は、企業理念への深い共感でした。

「ゼロウェイストに対する徹底ぶりが違うなと思ったんです。例えば、プラスチックを絶対に使わずに、小分け包装をしないこと。また、ごみが出ない仕入れを農家さんにお願いし、流通段階からゼロウェイストを目指しています。妥協がないというか、本当に理念を実現しようとしているという姿勢が、組織や事業に反映されているんです。」

もっと「nue by Totoya」を知ってもらい、ゼロウェイストを実現させるために、現状のシンプルなたたずまいから、商品を目でも楽しめる一覧性がある店舗にしたいと、店舗リニューアルの計画が始動しました。

心地よい空間が好評の、改装前の店内

専門家が織りなす手仕事の集大成

「nue by Totoya」の構想を実現すべく、建設プロジェクトに携わったのは、株式会社NoMaDoS、株式会社鳶髙橋です。

株式会社NoMaDoSの西田 沙妃さんは、もともと環境建築を大学院にて学んでいました。工夫をすることで、建物や空間になじみながらも環境によい建築物をつくりたいという思いを持っている建築家です。今回は「nue by Totoya」の設計を担当することになりました。

株式会社NoMaDoSの西田 沙妃さん

株式会社鳶髙橋の代表、髙橋慎治さんは解体現場の廃材に価値を見出し、風合いがある木材や素材の再利用をすすめています。今回は工事全般の責任者としてプロジェクトに関わりました。

店内工事はどこをとっても全員のこだわりがつまった空間です。その中でもとりわけ目を引く場所が、メインともいえる商品ディスプレイです。

「nue by Totoya」では、ステンレス、木材でできた什器、ドイツ製のディスペンサーである「Glasbin」を採用しました。ガラス製のGlasbinは傷がつきずらく、食材の匂い、味、色が移ってしまうことがない、食材の管理に適した素材です。ゼロウェイストで完全リサイクル可能な素材であるGlasbinの導入は「nue by Totoya」が日本初。まだ世界でも滅多にお目にかかる機会がない代物です。

商品が入り陳列されているGlasbin

Glasbinを提供するドイツメーカーは、こだわりと熱意をもった企業です。

そんなGlasbinを活かした空間にすべく、西田さんはただGlasbinを設置するだけではなく、ショーケース的に外から見える設計にしようと工夫をしたといいます。通常、空間に対して平行に設置する商品棚を斜めのレイアウトに設計、導線を意識した高さ、奥行、角度を具体化しました。

西田さんは日頃から、自然エネルギーを活かして思想・設計する”パッシブデザイン”の考え方以外にも、生活者目線での環境意識にも着目しており、今回もそういった工夫が見られました。

「今回は解体・分解のしやすさを重視しました。ずっとここで営業を続けて、地域に愛される店舗になってほしいという思いはあるものの、一般的に店舗移転の際の残置物などは、ごみになってしまいます。そうではなく、分解できることで運送しやすく、適宜再利用される什器を目指しました。木材同士をつなぐ際に用いる接着剤や釘。いずれも分解を前提としていません。。よって今回は、鬼目ナットという金具を採用しました。つなぎ目にはそれぞれ、ネジ部分とネジの受け口をそれぞれ設置することで、木材を傷つけずに着脱可能、再利用ができるようにしました。また、そういう構造であるということや、どこが分解できるのか?ということを、店長の井川さんにもご共有することが、とても大事だと思いました。」

鬼目ナット ムラコシ精工資料より(https://www.murakoshiseikou.com/pdf/joint_02.pdf)

普段から現場で出た木材や素材を持ち帰り再利用をするという髙橋さん。

「欄間(らんま)や梁(はり)、柱を廃材とせずにとりためて再利用をしています。明治時代の木材や素材は、決して作り物では表現できない、独特の風合いを出せるんです。」

そのように語り、やはり今回も工事でゴミを出さないといった工夫をこらしていました。

木材の使い方一つでごみは減ると考える髙橋さんは、なるべく無駄がでないように部材どりをして棚を作り上げました。

商品の陳列棚

「残った木材も装飾や小物に昇華させる、「廃材」と言葉の定義でゴミにするのではなく、定義をひきあげて生活の中に入れていく。その考えに共感をもってくれる「nue by Totoya」と一緒に思いを形にすることができることで、毎回の工事も素晴らしい空気で望ませていただきました。」

作業中の髙橋さん

工期や予算はもちろん、店舗にとって最善は何かを実現する

過密スケジュールでプロジェクトを進めていたため、通常とは異なる進行もありました。

オリーブオイルや油類の一斗缶を設置する棚は、缶類の現物がない状態での製作が必要でした。ちょうどよい角度に缶類を斜めに設置するなど、設計者の検討と施工者の経験により創意工夫をしました。知恵と経験があつまった棚、当日はぴったりと缶がはまり、「おーーー」と歓声があがっていました。まさにチームとしてすばらしい連携が形になった瞬間です。

オリーブ缶が棚に設置された瞬間

工事期間も営業を続けてもらいたいと、工事は早朝や深夜の対応、安全を考慮した上で工事中も店舗販売を可能に。

「工事もお店も日々進化する、そんな過程を作り手として目の当たりに出来た最高のプロジェクトでした。今回はNoMaDoSさん、そして「nue by Totoya」さんの理解と協力体制によるプロジェクトとなりました。関わる人達が良い関係性で理想の空間をつくっていく。一人ひとりの思いが、手作りのあたたかさ、専門性を活かした洗練された場所を形づくったのではないかと思います。」と髙橋さんは振り返ります。

店舗オープン当日の様子

「nue by Totoya」は、ゼロウェイストを目指す、作り手の思いが形になった空間。人々の生活をより豊かにする場所として華々しい再スタートをきりました。

written by : Ayaka Sakashita

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