Grand Galleryは、ファッションもアートピースの1つと捉え、国内外から質のよいヴィンテージや、一過性のものではないブランドをセレクトし、提案しています

海外アーティストや著名人も訪れていたGrand Galleryの改装を記念して、建築、音楽、ファッションや働き方、幅広いテーマでトークセッションをおこないました。

動画でお送りした内容を、ブログでもご紹介します。

■出演企業 (Web Site)

株式会社鳶髙橋 ➢https://tobitaka.tokyo/

Grand Gallery ➢ https://www.grandgallerystore.com​

tecture株式会社 ➢ https://www.tecture.jp​

株式会社鳶髙橋 代表 髙橋慎治

鳶髙橋設立の背景

もともと私は町鳶の家で生まれたのですが、学校卒業後は80年代・90年代の音楽文化を発信していたライブハウス「渋谷インクスティック」で空間構成、出演アーティストのプランニングをするようになりました。

2001年にクラウンレコードからリミックスアルバムを発売、楽曲の一部は映画、リクルートCM楽曲として起用されました。

音楽活動を通じて、人は感情がフロントに立って何か感動を求め、人が集まることによって生まれる体験があるということを学びました。

2011年から鳶髙橋の代表に就任しました。町場の仕事ばかり請け負っていたのですが、売上、利益が上がらない状況で、ゼネコンをやったらおもしろいんじゃないかと思い、ゼネコンを始めました。その後、設計事務所を設立、設計事務所とゼネコンをやるようになっていったときに、建築は不動産との関係が大きいなという風に感じるようになって、建築と設計と不動産がつながるような領域で仕事をさせていただいています。

ある日、井出靖さんからグランドギャラリーさんの改装工事のお話をいただいて、僕らが設計デザインをすることになりました。

グランドギャラリーは、国内外のアーティストが訪れる文化発信地です。だとすると、ここで始まるストーリー、改装のようすも映像に残した方がいいなと思ったんですね。

そして、建築業界はIT化がすごく遅れている状況があるなかで山根さんに出会い、おもしろいことやっているなと思って、山根さんをお招きしてお話を聞きたいなと思い、イベント開催が決定しました。

自己紹介をする山根さん

テクチャー設立背景

山根:テクチャー株式会社の山根と申します、よろしくお願いします。

僕はもともと、隈研吾建築都市設計事務所で9年ほど建築家として活動してまして、その後LINE株式会社というIT企業が設立したタイミングで、ブランディングデザイナーとして入社しました。

そこに入社して4年ほど経ちました。設計業務はクリエイティブな業務にみえがちで、すごくアーティストみたいな扱いされる人もいるんですけれど、だいたい一日の業務時間の18%がクリエイティブで、ほかは雑務とか打ち合わせなんですね。ほとんどクリエイティブな時間がないのが現状で、ほとんど働き方が2~30年以上変わっていない、そこにちょっとテックを入れたらもっとみんなが便利に、もっとクリエイティブな環境がつくれるんじゃないかなと思って、2年前にテクチャーという会社を起業して、建築家だけじゃなくてデザイナー向けの画像の検索サービスをやっています。 

井出靖のつくってきた空間デザインと工事決定まで

井出:どうも、はじめまして、井出です。

おふたりの前でいう肩書きとか別にないんですけれど、ここのお店に移って2021年3月で10年になるんですよ。その前が宇田川町の東急ハンズ前に物件を借りていて、ここに自分たちのレコードレーベルと、レコーディングスタジオをつくろうということになりました。今度3階が空いたらギャラリーをつくろう、そんな話をしていると物件が空くんですよ。その次に2階が空いたらセレクトショップにしたいなと思うとこれまた空室になったんです。ただ、10年前の震災時にレコーディングスタジオの扉が開かなくなっちゃって、それでこのまちに越してきて、10年になります。

今はしょっちゅう内装を変えて、たとえば、犬のグッズを販売するセレクトショップ、ギャラリー空間、壁を取るとステージになっていて、そこで演奏ができたりとか、飲食の許可をとってお酒を提供することもあります。今着ている洋服のブランド「GALLERY DEPT.」っていうんですけれど、今これだけしかないとか、テーマごとに全部変えてつくってたりとかしています。

内装をもう10年変えていないってなかなかないと思うので、どうしようかなと思ったときに、ちょうどFacebookのタイムラインに髙橋さんのページが出たんですよね。髙橋さんがやっている活動がおもしろくて、髙橋さんに連絡してみようと思って、すぐメールをしたっていう、そして今に至るというところなんで、ここからは皆さんでお話ししながら音楽と建築とかを含めて話せたらなと思います。

髙橋:井出さんとは何年もSNSでやりとりさせてもらっていて、おもしろいものを売っていらっしゃっていて、それを結構買ってたりとかしていまして、それで井出さんからいつもとまた違う話が来たなと思ったら、空間デザインと内装のお話が来たんで、びっくりしちゃって、これは嬉しいなと思ってすぐいきますって感じでやらせてもらっているような状態です。 

Grand Gallery空間を、より進化させたい

井出:僕たちは結構、いろんなところでパーティーをやってたんですけれど、自分のお店でもできないかなと思っていました。それが10年前なんで、まだ音楽と食とお店というコラボレーションがあまりなされていない時代でした。

竹花いち子さんとか岸本裕子さんとか阿部久美子さんとか、みんな最初からやっていて、ワインだったら亡くなっちゃた勝山晋作さんとすごい仲良くて、ワインを入れさせていただいたりとか、何か僕、白いものから白いものが好きで、本当にホッピーからシャンパン好きで、夕方ぐらいになったら、お客さんに「飲みますか」とか聞いて、飲みながら買い物するっていうか。

お店が営業中だから飲んじゃいけないとかはなく、自分たちでやっているから、自分たちのお店の雰囲気でいいんじゃないかみたいなところがあって、ライブとか全部クローズドなんですね。僕が案内した人しか知らなくて、そうやって物をつくりながら、空間をこういう風に楽しんでいくっていう。

今回髙橋さんにお世話になることなんですけれど、天井も抜く、この壁も壊して、奥までのひとりの空間にすると、自分たちみたいな小さい会社っていうか、こういうところでギャラリー機能が全部できたりとか、そういうことなかなかできないと思うんで。僕らは結構、アーティストも呼んでいるので、そういうことを気軽にできる場所につくり変えたいなと思い、今回やっています。

髙橋:井出さんとお話した時々に一番気になさっていてたのは、広さと空間の広がり方です。限られたスペースのなかで、ギャラリー、個展、パーティー、洋服の販売など、フレキシブルにいろんなことができる空間をつくっていくっていうことになると、広さが必要だということになります。

まず、天井が抜けるのかといわれて、大丈夫ですと、エアコンは大丈夫かっていうこともいわれて、そんなことをやりながら、打ち合わせをして一つひとり、決めていきながら作業を今やっているところです。井出さんから、こういう感じがいいなっていうことはいわれていて、それに近いところとか、似ているような世界観が出せる空間を僕らはつくっていきたいなという風に思っています。

テクチャーとの関わり:レガシー×ITで物づくりはどのように変わるか

髙橋:テクチャーがオープンしたのが去年の6月頃でした。それをみて、これはすごいなと思って、商材を選んだり、何かアーカイブになって残っているものが多分、テクチャー以外に日本でないなって。

いつも商材を選んでいるときに、みんな分厚いカタログを朝からみて探し物をしているような状況で、探しているだけでデザインの方に入っていけない、クリエイトができていないっていう状態があって、そういう働き方を変えていきたい、建築の未来を変えていきたいっていう山根さんの思いがすごく伝わって、山根さんとテックの世界を、ちょっとやってみたいなって思ったりもしたんです。

山根:テクチャーは基本的には設計者、デザイナー向けのサービスなんですけれど、一番困ることって物を選ぶことらしいんですね。

ハウスメーカーさんは基本、素材は全部オプションの組み合わせになっているので、もうお

客さん側が選ぶのがしんどいと。今の時代、Pinterestのイメージボードみたいなものをお客さんがすごくつくっているのですが、それを渡されても設計者はそこに使われている家具が何なのかがわからないわけです。結局それを探すことに無駄な時間を使ってしまっているんです。

僕たちのサービスは、素材の写真と情報が紐付いているので、ポチッと押せばどこの家具とかがわかる。雑誌をみて、 Googleで探して、メーカーのホームページにいったり、ECサイトにいって購入するとかではなくて、それは今まで全部別々のITソリューションなんですけれど、それを一気につなげてしまおうみたいな、そんなところをやって、みんなの働く時間が短縮できたり、クリエイティブな時間を生むためのサービスを今やっています。

あとは、実務をやられている方のマインドをやっぱり変えていかなきゃいけないと思っていて、サービスがあるから、どうにかなるんじゃなくて、そのサービスの、僕たちに共感してもらって、使ってもらって、どんどん自分たちで変えていかなきゃという、業界、会社を変えていかなきゃみたいなところに、もうちょっと組み込めるかなと思って活動しているところです。

テクチャーサービスサイト

井出:あれつくるのすごい大変そうですよね。最初みて何が起こったかわからないくらいで、どうやって考えてつくったのかなって。今お話し聞くとつくらなくちゃいけない必然性があるとわかったんですけどつくることはほんと大変そうで、、、

山根:今も大変です(笑)

井出:つくったものを使うことはすごく早いけど、これをどんどんレベルアップしていくのは本当にすごいですよね。しかも無料サイトですよね?

山根:無料ですね。イメージ的には、食べログだと思ってもらうとわかりやすいですね。食べログがある前って、雑誌とかでお店探したり、大阪にいったら関西ウォーカー買ったりとか、そういう地方ごとの雑誌を買うっていうのが文化だったと思うんですけど、今って大阪だろうが福岡だろうが今ここで調べれるじゃないですか。

すごいのが”、「イタリアン 渋谷」って入れたら渋谷のイタリアンが全部出てくるじゃないですか。そんな風にタグづけでまとまった情報が手に入れるっていうのは、選ぶ側のリテラシーというか、審美眼みたいなものが必要ですけど、すごく情報自体は取り出しやすくなったなと思っていて、僕たちはそんな感じで世の中のデザインデータとカタログデータを全部集めてタグ付けするような世界を描いています。

たとえば、黒いスポットライトを探そうと思ったら色んなメーカーのカタログのなかから黒いスポットライトのページだけをみつけてこなきゃいけなかったのが、今は「黒 スポットライト」と検索すると、メーカー関係なく色んな黒いスポットライトが出てくるので、体験としてだいぶ変わるのかなと。ただ、めちゃくちゃ大変です(笑)

AR技術によって変わる建築の未来

井出:そうですよね。すごいなと思って。単純にみえることこそ裏側の実現させる仕組みってすごいじゃないですか。しかも常にレベルアップしていかないと飽きられちゃうかなと。さっきもCasa BLUTUS*をみていて、このなかにある3Dになっちゃう技術は凄いびっくりして。

この機能だって聞いていなかったらそのページ飛ばしてるかもしれないですしね。これちゃんとわかっていればみれたりするじゃないですか。本当すごいな、って。 

*井出さんの興味を持ったAR機能。スマホをかざすと誌面に3Dの建造物が浮かび上がる。

山根:全然話変わっちゃうんですけど、今まで雑誌ってカルチャーの部分と広告ですよね。雑誌の三分の一くらいが広告っていうところで、お客さんがだんだん広告っていうものをみなくなってきているんですね。ただ、今おっしゃっていただいた通り、こういうソリューションが使えるとわかると、広告だろうがみてみるっていうことが起こるらしいですよ。

井出:たとえばこのソリューションがTシャツにあるとするじゃないですか。そしてかざすと3Dになるってすごくおもしろいじゃないですか。こんなようすで変なことがすぐに思い浮かんじゃうんです。ほかにはハンカチなのに「これみて」っていってそこから浮かび上がったり、それだけでおもしろかったり、紙があれば立体にイメージが立ちますもんね。そうやって見方が全然建築ひとりでも変わりますね。 

奥にビンテージTシャツとかもあるんですけど、デザインが3Dになったりしたらすごいですよね。もっとさらにいろいろ使えるのかな、なんて勝手にも思っちゃったんですけど(笑)。

山根:使えます(笑)。エンターテイメントとしても使えますし、今それをベースにしてほかにもいろいろなことができるんだよっていうのもアイデアを出しています。先ほどもおっしゃった通り、常に新しいものを出さないと飽きられちゃうことがあります。そういった点で僕たちはいろいろなアイデアをちりばめながらやっています。世界中をショールームにという感じでいろいろなところで使えるようにしたいですね。

髙橋:なんか、井出さん雑誌を10年みてませんっていう話を伺ったんですけど。

井出:雑誌をみないっていうかコンビニにそんなにいかないからですね。今本屋さんにもいくこともないですね。昔は好きだったんですけど読むことが、広告が多いからかもしれないですけど、あまり読まなくなっちゃったんですよね。それに、CDとかも出しているのにタワーレコードのリニューアル以来いってないから、10年ぐらいいってないのかもしれないですね(笑)。ただインスタグラムとかはみるので興味のあるものを目にして三日くらいしても気になっていたら、ダメ元でその人にコンタクトを取ったりとかはしてますね。なので今回このCasa BRUTUSをみてすごいな、やってみたいなって思っております。

山根:ありがとうございます。 

髙橋:このCasa BRUTUSのように雑誌もIT化ということですね。

山根:実は新聞でも7~8年前くらいからARを取り入れたらどうなるんだろうということで取り組んではいるんですけど、なかなか根付いていないというのが現状です。情報が拡張されるというよりも、空間情報にほかの情報をミックスしているというようイメージですね。なのでカタログ読みたい人が雑誌も読めるし雑誌みたい人がカタログもみれるみたいに、相互に行き来できる感じですね。今回は別ものを掛け合わせたからちょっとうまくいってるかなっていう感じはしてますね。とはいえ、世の中自体が実験段階ですね。

広告結果がみえる化されたことにより商売の効率化

髙橋: 山根さんの話でよく雑誌の見開きの広告の話があると思うんですが、山根さんはメディアもやられてますし、この辺りのお話についてどのようにお考えですか?

山根:見開きの片ページで広告料が150万円くらいなんですね。いろいろなメーカーさんのお話聞いていると、そこから計算してどのくらいのお客さんが来てくれたら150万円の価値があるんですかって聞くと「いやー、わかんないんですよね、でもこのCasa BRUTUSは6万部売れてますから」と。

でも僕は絶対全員は広告みてないよなって思いますね。そこで「問い合わせてどれくらい増えたらいいんですか?」と聞くと「大体100件ぐらいですかね」とおっしゃるんです。

「だったら僕らは数万円ぐらいで100アクセスを集められる自信あるんでやりませんか」と提案することがあります。

結構な確率で、KPIの目標設定の仕方ができていないことがあります。その割にFacebookとかインスタの広告に関してはすごく数字取ってるんですよね。なので雑誌広告に使ってるお金っていうのはもっとみえる化していくっていうのは大事だろうし、そもそも広告っていわれているものがつまらなくなっちゃっているので、しっかりコンテンツ化していくっていうことを意識したほうがユーザーも企業側もハッピーだろうなって思うので、もっと気づいてほしいなと思いながら活動しているんですよね。

IT技術による唯一性の担保

山根:音楽って版権があるじゃないですか。だからこそ広く楽譜が普及していてみんなが追体験できたり、それをベースにまた違うものクリエーションできるっていうようなことができると思うんですけど、建築に関してはあんまり権利関係がはっきりしていないものだったりとか、そのもの自体の追体験する価値がないとみんなが思い込んでしまったりしているので、ちゃんと版権とかを整理して広く出すことで、業界が盛り上がればいいなと思っています。

そういった意味で音楽の版権の整理は僕に取って勉強になっています。

たとえば、今やろうとしていることは楽譜の版権ビジネスみたいなことをやるのと似ているね、と周りからいわれたりしています。

井出:たとえば洋服も著作権ないからこれが偽物だ、と判例に乗るまではすごい大変ですね。似たようなものがいくつもできちゃうんですよ。私たちが扱っているGallery Dept.の今季の新作もすごく好評なんですね。

今日もグラミー賞で着ている人も多いほどなんですけど、ほかのブランドからまったく同じデザインを真似したものが出たりしてるくらいなんです。でも著作権がないからそこは訴えられないです。その点音楽は譜面等が著作権に守られていますよね。

髙橋:その話を聞くと、何かをつくる人たちの権利が軽く感じられてしまいますね。ただこれからの未来もブランドをつくっているときにほかの人たちと違いのあるものをつくっていくことがブランドの価値であるとして、建築の場合も建築自体を頼まれるかというよりも、建築を誰に頼んでいくかっていうのが多分ブランドであると感じています。なので山根さん、テクチャー株式会社さんには同じものがない世の中にして欲しいですね。

ジャンルによって異なるカルチャーへの向き合い方

山根:デザインでやってこられた大先輩の前でなかなかいいにくい話なんですけど、デザインをそういう権利で縛りすぎちゃうとカルチャーは生まれにくいな、とも思っています。

そこら辺のバランスが大切ですよね。ITだとコアな権利は自分等で持っているんですけど、逆にオープンソースとして新しいものをつくってこれ皆使っていいよ、っていう風にして、この20年でかなり進化してるんです。

1からつくっていくと皆が同じ10年間掛かっちゃうなんてこともあるんですけど、たとえばGoogleが出している検索や、ARの機能を自由に使って新しいものをつくっていくという世界なんですね。

その結果、1人ではできなかったことが、みんなで同じ技術を利用してすごいスピードでスケールしてるっていうのが実現しているんですよね。本来100年ぐらいかかって成熟させようなものが、10年20年で実現できたっていうことはより豊かな世界がつくり上げられましたよね。

ただ、デザインの文化だとそれが難しいなと思っていて、このデザインにここを足せば差別化できるのか、それとも訴えられるのかっていうギリギリのところで皆がやるのはまたちょっと違うし、とかそこは建築もファッションも音楽もすごくとか権利について難しいところですね 。特に音楽に関してちょっとコード変えればいいのかな、とか変な話になっちゃうじゃないですか。

井出:結構似たような曲いっぱい有りますもんね(笑)。

山根:ぼーっ、と聞いてたらこれどっかで聞いたことあるなって曲結構ありますもんね。(笑)。

井出:これどこまで許可取ったのかな、なんて思ったりすることたまに有りますもんね。

山根:僕はもともとクラシックのピアノをやっていたので、しょっちゅう似たメロディを聞くことが多いですね。

後半へ続く

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