鳶職は一般的に専門工事業者約40業種のうち高所作業の専門工事業種1職種として認知されています。
しかし、植木屋・屋根屋・外壁屋のように「~屋」と名が付く建設業種が多く見られる中で鳶に「屋」はつきません。我々は代々「仕事師」と教わってきました。先代から教わった「仕事師」に必要とされることは数多くあります。

・何でもできなければいけない・覚えることはいくらでもある

建設業において高所作業を軸とした鳶事工事、あらゆる職工に精通した知識とスキルが求めらる、覚えること・まなぶことが非常に多いです。

・道具を大事にしろ・物を大切にしろ・なんでも丁寧に扱え

享保の時代。火消しの道具といわれていたものは纏・鳶口・刺又・竹のハシゴ<梯子>・龍吐水・玄蕃桶・大団扇がありました。これらの道具は、およそ300年近い江戸時代の中で考案されたものです。火災における危険を試案すると、火消しの道具は町人の安全に直結する重大な道具でした。現在でも道具・物を大切に扱う意識が受け継がれております。

仕事師は、礼に始まって礼に終わる

鳶は職人として、兼業の江戸町火消として活躍していたわけですが、階級制度が特に発達しています。職人は親方・兄弟子、江戸町火消においては組頭・組頭副・小頭・小頭副と道具持ちと階級によって、役割や責務を分担しています。明治・大正時代には、江戸町火消は東京消防・帝都消防として消防組と位置つけられ東京警視庁により役職を正式に拝命しておりました。それぞれの階級が一目でわかるユニフォームが火消しの半纏です。半纏の印物は階級制度のなかでの、制約があり、例外なく誰でも着ていいものではありません。
今の江戸消防記念会の正式な半纏というのは明治時代に入って決められた赤筋の入った半纏です。肩から袖口まで太い子持ちの赤筋が入っていて、半纏の背中には鏡の中の地色が朱になってその鏡の中には太い字で番組の数字が入ってます。大胆な絵柄の半纏が誰が見ても一目でわかる階級になってます。私たちは目上の方や先輩方、さらには鬼籍に入られた先人の方、神社や仏閣への信仰・参拝・切願の文化を大切にしています。伝統を重んじる江戸町火消も、霊山や古刹を機会あるごとに訪ね安全を切願しております。先人の功績がなければ私たちの今も途絶えていたかもしれません。常に先人への感謝をしていきます。それも、礼であると思います。江戸の町を火災から命がけで守ってきた先人の鳶・火消しに感謝し平和に毎日、安心して暮らせる今をありがたがり、伝統の礼節を大切にします。

掃除と後片づけが下手なやつは仕事も汚い

「ひっ散らかして、店広げて、このザマじゃ情けないとは思わないのかい?」と師匠から教えてもらった事は仕事の手順です。

・仕事は音頭でやる。惰性ではいい仕事ができない、ケガをするぞ

「惰性ではいい仕事はできない、ケガをするぞ。」頭と身体をリズムよく使いながら仕事を進めていくことでハイクオリテイーの良質なものが作れるという、感覚を研ぎ澄ます大切さの教えです。

・仕事師は腕で稼ぐ、お足はあとからついてくる

お足というのは、お金や金銭のことを言ってます。腕で稼ぐとは?習得した技術を持つものの稼ぎのことです。

・仕事の逃げと急所

建築の仕事は、間を割り付けることをします。寸法割という、同じ寸法サイズを同一方向に割って行くときに、最後に半端な寸法が現れる。これが逃げです。
急所とは、その仕事において重要度の高い要素となる寸法のサイズや商材寸法だったりします。

・仕事は見て覚えろ。理屈で仕事をするな

見て覚えるとは、技術力の高い職人が、製作しているところを手伝い(手元)をしながら、一緒に完成までモノをつくり習得することで、理屈で仕事をするとは、製作現場ではない机上や知識の知見だけで建築を作ろうとする仕事方法。

・先が見える・先が読める人は人も仕事も粋

粋とは?野暮の反対で、洗練されていること建築で先が見えたり、読めたりする人は完成の着地点の高い精度を理解予測できるつくる姿勢と、洗練された振る舞いも伴った人となりのこと。

朝は誰よりも早く出ていき今日の支度・段取りをとれ

建築をつくるのには、多くの道具や資材を使う。建築工程によって使う道具、資材が毎日違うので、毎日、その日の製作に適合した道具や資材を、朝早くから準備しなくてはならない。よく仕事を知っている人は支度、段取りが、わかっている。

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