株式会社鳶髙橋は、4月17日グランドオープンとなるおせっかいハウス「昭和の寅や」のグランドデザインを担当しました。東京に本社を置く鳶髙橋が長野県千曲市のプロジェクトに関わったきっかけは千曲市で行われたワーケーションでした。「昭和の寅や」に携わるまでの過程や、東京の廃材や自然に還る素材で作ったデザインへのこだわりを紹介します。
出会いはちょっと変わったワーケーションへの参加
2020年11月、鳶髙橋は千曲市ワーケーションウェルカムデイズ(以下:千曲市ワーケーション)に参加をしました。
「快適な働き方の実践」と「温泉・絶景など地域資源を活かすこと」を目指した千曲市ワーケーションは、地元の方々と地域課題を話し合い、実際に配車アプリをつくるなど、普段できない体験が詰まっている体験会でした。
多くの出会いに刺激を受けて繰り返し参加をする中で、「昭和の寅や」女将として千曲市に奇跡を起こした女性と出会うことになります。
「昭和の寅や」プロジェクトに参画
「映画『男はつらいよ』の寅さんのようなあったかい世界をつくりたい」と語り続けていたのが清水則子さん(以下:則ちゃん)です。
シングルマザーで資金も人脈もなかった則ちゃんですが、彼女の純粋な思いに共感した人々が企画書や事業計画書を作成、物件選びなどスキルを持った人々が力を出し合い、あっという間に夢が実現につながっていきました。
鳶髙橋もプロジェクト発足から建築のアドバイスをさせてもらいました。
大切にしたのは交流が生まれるデザイン
紆余曲折がありながらも、なんとか物件購入にこぎつけた「昭和の寅や」。
築52年の2階建て木造アパートは、6部屋、ガレージ13棟がある物件です。
もともと飲食店を経営していた物件を人々が集まる空間にデザインするため計画を練りました。
「昭和の寅や」のデザインを考える際に訪れたのは、『男はつらいよ』の舞台になった柴又です。柴又の町並みを見て、瞬時に候補の色が次々と頭に浮かびました。
「昭和の寅や」がもつ、にぎやかで色々な方が集まる様子はまさに色とりどりな日常でした。そんなあたたかく賑やかなカラフルな世界を引き立てるためにも、外観はシンプルな「墨色」を採用しました。
人に、環境にやさしいデザインをまちの風景になじませる
グランドデザインのテーマは、「人と暮らしと働くことがまちの中で繋がる、昭和の世界」です。
実は、日本の伝統建築こそ社会課題やサステナブルにつながります。
伝統建築は天然素材から構築されており、解体したあと、土に還ることができるのです。
今回のテーマにあわせて差し掛けに利用したのは東京で発生した再利用可能な廃材と、竹、丸太、縄、杉皮などの厳選した天然素材です。
室内は景色を借りてデザイン
「昭和の寅や」シェアハウス(がじろー)の一室に作った雪見窓・丸窓と欄間は、外の光を取り入れる機能を持っています。欄間は東京の解体現場から再利用した建具を採用し、雪見窓には自然素材を用いました。
雪見窓・丸窓に利用した竹は、長谷寺で自生する竹です。エネルギー溢れる場所で育った縁起のよい素材を利用することによって、シェアハウスに住む人にご利益がある、部屋を卒業するときには出世できる部屋になることを願っています。
雪見窓から四季折々の情景を借りる、借景することで、時間が織りなす景色の変化、四季がもたらす変化を感じられます。部屋の外と中の境界を曖昧にすることによって繊細で情緒深い演出の当事者になり、新しい発見ができるかもしれません。
目の前の公園をながめながら自然と軒先で腰を掛け雑談をする。
そんな空間を目指してデザインしたのが、古民家の梁で使われていた欅(けやき)の原木を利用した腰掛です。木の暖かみを座りながら感じることができる場所として喜んでいただきました。
「昭和の寅や」は、まちと同居する空間として愛されるランドマークになることを願っています。
YouTube
YouTubeでは、施主の則ちゃんにコメント、鳶髙橋と出会った経緯や印象についてお話を聞きました。