2024年1月におこなわれた「トレイン面接」。最終面接をしなの鉄道の列車内でおこなう、特別な経験をした高砂昂大さん。その場に居合わせた人々から見守られ見事合格した高砂さんは、現在鳶髙橋の建築工事部で都内の新築集合住宅建設プロジェクトで活躍をしています。「トレイン面接」の実態とは……。当時のようすを振り返り、入社から1年半たった高砂さんの現在に迫ります。
列車で面接!?しなの鉄道車内で実施した「走る採用試験」

学生時代に建築・設計を学び、学校を卒業してから公務員の臨時的任用職員として働いた経験を持つ高砂昂大さん(28)。彼の新しいキャリアは、しなの鉄道車掌による「ただいま面接試験が開始されました」というアナウンスから始まりました。
高砂「知り合いからおもしろい会社があるといわれ紹介されたのが株式会社鳶髙橋でした。Webサイトをみて、新しい取り組みを積極的におこなっている会社なのでぜひ入社したいと思いました。オンライン面談を経て、髙橋社長と初めて会った場所はしなの鉄道SR-1系車両内のクロスシートでした。ここで面接するとは夢にも思わなかったので、本当におもしろい会社だなと実感したのを覚えています」

長野県千曲市で定期開催されているワーケーションイベントの名物企画「トレインワーケーション」。列車の景色はもちろん、参加者との交流を楽しみ、仕事にも集中できるイベントに、求職者である高砂さんは招待されました。イベント参加者が静かに見守るなか、面接スタートのアナウンスが流れ、高砂さんの緊張はピークに達したといいます。
高砂「温泉街に到着してから宿や会議室で面接をすると思っていたので、想像もしていない状態に頭が真っ白になりました。用意した言葉は消えて、思ったことをそのまま話した記憶があります。髙橋社長は、私がイメージしていた”社長像”とはいい意味で異なる、人のよさがにじみ出ていて、とても話しやすい人という印象を持ちました」
高砂さんの飾らない言葉で語られる情熱に鳶髙橋代表の髙橋も応えるように「東京文創」や自身が考える働き方、働くうえでウェルビーイングがいかに大切かなど、熱を持って話しました。
浅間山に祝福されながら、採用発表は車内アナウンスで

30分ほどの面接が終わり、面接の結果は車内アナウンスで発表されました。「ただいま株式会社鳶髙橋の最終面接をした高砂さんですが……採用が決定しました」車掌さんが話し終わると同時に、乗客から温かい拍手と「おめでとう!」と歓声が沸き起こりました。居合わせた人の心がひとつになった採用の瞬間は、偶然にも浅間山が望める場所でした。後から聞いた話によると、景色を長く楽しめるように運転士さんが減速をしてくれたようです。高砂さんのキャリアは全員の感動とともに幕を開けました。
入社1年目、走る車両から建築現場へ

学生時代に設計や建築を学んでいた高砂さんは、工具の使い方、現場で飛び交う単語を理解していた一方、今でも毎日学びがあると語ります。
高砂「最初の案件は現場作業と施工管理の仕事を担当させてもらいました。所長からの指示を職人さんに伝えるときに、職人さんからの質問に答えられないことがありました。最初は所長のお名前を借りて”所長からの指示です”といいながら伝え、徐々に自分の解釈をもって管理者として伝達ができるようになっていきました」
どうしても立ちはだかる経験不足。高砂さんは職人さんとの関係構築のために、工具の受け渡しや、自分ができることを少しずつ実践していきました。職人さんからアドバイスを受けた際は、実践はもちろん、うまくいったと報告を心がけていたそうです。地道に仕事に励む高砂さんの姿勢は評価され、今ではよく話しかけられ、質問をされるようになっているそうです。なにごとも要領よく器用にこなしていく高砂さんですが、所長であり先輩からは「視野が狭い」と注意をされることもあったそうです。

高砂「管理の仕事と現場作業を並行して実践しているので、作業だけに集中すればいいわけでないんです。誰が来て何をやっているのか、次の工程を念頭に置きながら準備や段取りをおこなう難しさを日々実感しています。本当に毎日が学びの連続で大変なのですが、所長や職人さんがサポートをしてくれるおかげで楽しめています」
所長からは、自分で考えて、実践し、小さい失敗から学んで改善を繰り返すのが重要だと教わっているという高砂さん。裁量を持って現場に立てるため、充実した日々を送っているのかもしれません。
長時間労働を覚悟していた建築業界、実際は……

高砂「学生の頃は建築業界は長時間労働で、怒号が飛び交うブラック業界だと思って覚悟をしていました。しかし、鳶髙橋は能力次第で時間に融通がききますし、一緒に働く方々は仕事には真剣ですが、にこやかな方ばかりです。一番すごいと思ったのが、建築工事部の監督が豊富な経験を持っていて、工夫をしながら最適解で業務をおこなっていることです。たとえば、大手企業では費用をかけて購入する掲示物を自社で用意して時間とコストを削減するなど、常に生産性の向上を意識されています。自分の時間を大切にする人が多いので、とても働きやすいです」
建築工事部の監督はそれぞれ大手企業での学びを独自のノウハウとして生かし、最適化をしているのだとか。大きい組織では指示の遵守が優先されますが、やりやすいスタイルをみいだせるからこそ、無駄なく生産性が向上しています。

定時帰宅ができるため、モノづくりが好きな高砂さんは、入社前からつくっているレザークラフトでプロ顔負けの作品を次々に生み出しています。年に3回ほどマルシェに出展をして作品を販売しているそうです。そこで出会ったクリエイターや、設計士になった同級生と交流をしたりと充実した日々を送っているのだとか。
設計から施工まで一気通貫で対応したい

高砂さんが現在取り組んでいるのが施工管理技士の資格取得です。試験勉強をしながら、一度教わった学びを忘れないように知識として身に着け、経験として落とし込んでいきたいと意気込みます。一緒に働く所長やメンバーからは「早く所長になってくれよ」と期待をされていると笑顔をみせます。
高砂「今は一人前になるために、所長や職人さんからひとつでも多くを学び、体にしみこませるのに必死です。何年先になるかはわかりませんが、設計から施工を全て自分の手で形にする、学生時代からの夢は実現したいです。確実に施工管理や現場仕事を学べる環境にいるので、引き続き先輩の背中を追いながら尽力していきます」
列車での「トレイン面接」を経て動き出した彼のキャリアは、鳶髙橋の現場で多くの先輩や職人に支えられながら、確実に夢の実現に向けて走り続けています。