株式会社鳶髙橋コミュニケーションデザイナーの井口啓太です。前回和歌山県で実施された梅収穫ワーケーションに続き、今回は富山県魚津市で開催された「Uozu well-being week」の「魚津まっつり応援団」として参加してきました。「都会で働く人と地域をつなぎ生き方・働き方の選択肢を増やす」TUNAGUプロジェクトの一環として実施された「魚津まっつり応援団」の活動は、自分らしい生き方・働き方の選択肢を増やすことを目的としたプログラムです。

ユネスコ無形文化遺産に登録された地元のお祭り「たてもん祭り」に参加することで、地元の方々が大切にしている文化や共同性の力を体感してきました。

魚津を愛する人々との出会い

宿泊先の前には漁港の景色が広がっている

富山県魚津市は日本海に面し、立山連峰の山々に囲まれた自然豊かな環境です。富山湾の新鮮な魚介類、特にホタルイカやブリが有名で、過去には魚をみながら仕事をする「魚(ウオ)ケーション」をおこなうなどワーケーション実施にも力を入れている地域です。

そんな魚津に到着し、最初に感動したのは宿泊先からみえる海の景色でした。港町にある一棟貸しの宿「渚泊魚津丸」はワーケーション施設として広く活用されている場所ということもあり、働きやすさはもちろん、ふと視線を上げると海が広がっています。これ以上の贅沢はないと思わせるほど、自然の美しさを感じながら仕事をおこなうとリフレッシュもでき、生産性が上がっている実感がありました。

志を同じくする仲間と語り合い、地域について語り合う

初日の夜には、参加者・地元の方々との交流会がおこなわれました。なんと魚津市長も参加されており、市をあげてプロジェクトを盛り上げている気運を初日から感じました。遠いところは沖縄など、日本各地から集まった魚津を愛する人々とおいしい地元料理を食べながら、魚津の魅力や祭りへの意気込みを語り合いました。

交流会中、全員が自己紹介や参加理由を話す機会がありました。それぞれいろいろなことをお話していましたが「各地をめぐっているなかで魚津に出会い、好きになった。」、「地域創生に興味があり、自分もなにかできることをしたい。」など、魚津が好きで魚津のために何かしたいという想いは同じでした。全国各地で生活している人々がこの日のために集まり、地元の方々とお祭りを、そして魚津を盛り上げていこうという共同性が生まれた気がしました。

おそろいのTシャツに身を包み、共に汗を流し、作り上げる喜び

市役所の方とおそろいのTシャツを着て準備が始まります 筆者:右

メインプログラムとなる「たてもん祭り」は、約300年の歴史を誇る伝統的な祭りです。高さ約15m、重さ約5tの巨大な木柱「たてもん」に約70~90個の提灯を飾り町内を引き回します。魚津神社へ船の安全祈願をするために生まれたとされており、地域の人々にとって先祖代々の伝統を継承し、地域の結束を深める大切な祭りとして大切にされています。

たてもんの台と心棒に提灯などを飾り付けていく

夏の日差しに肌を焼かれながらも、参加者の面々は笑顔で準備会場へ向かいます。各グループに分かれ、担当する「たてもん」とご対面。あまりの大きさに圧倒されます。「たてもん」は車輪が付いていないソリの形をした台(約2.6m×約2.2m)の中心に、高さ約15mの柱(心棒)を立て、全体が三角形の形になるように提灯やぼんぼりを飾り付けていきます。(出典:魚津市役所Webサイト https://www.city.uozu.toyama.jp/

「たてもん」に飾り付ける提灯

「たてもん」の提灯は手作りされたものでした。和紙に手書きで描かれた模様はそれぞれ味があり、灯されるロウソクが温かみを生んでいます。

地元の方と縄を締める鳶髙橋代表の髙橋

まずは台となる木組み部分の縄を締める作業をおこないました。東京で花園神社の祭事に長年関わってきた代表髙橋の手際には地元の方も驚かれていました。東京と魚津をお祭りがつないだ瞬間ともいえます。

地元の方が手際よく「たてもん」に提灯がついた木枠を括り付けていくのですが、そこでベテランの方が若手の方にリアルタイムに技術や伝統を受け継いでいく瞬間をみることができました。ユネスコ無形文化遺産に登録されたお祭りが、地元の方々のなかで脈々と受け継がれていく光景に感慨深いものを感じました。

提灯が取り付け終わるころには美しい夕焼けが

各町内で「たてもん」を飾り付ける作業が進み、「たてもん祭り」の本番前夜には家族や友人たちが集まり、あたたかさと興奮冷めやらぬわくわくとした雰囲気に包まれています。暑さに負けない熱さをもった人々の手により、地域全体の一体感が伝わってきます。夕陽を背にした「たてもん」をみあげると心の奥底からこみあげてくるものがありました。準備が終わった達成感と、これから始まるお祭りへの期待感で話も弾み、心身ともに満たされていきます。

共に参加しているメンバーや地元の方と地元食材を活用した食事を楽しむ

素敵な景色を眺めながらオフサイトで仕事をするワーケーションも素敵ですが、こうして地域の文化や歴史を体感し、地元の方と作業を共同する体験が地域社会とのつながりを生み、充足感を生むのだと思います。同じ体験をして地元の食事を囲むことでより一層団結力が深まり、地域への想いも深まります。どのような仕事においても最終的には地域をはじめとする社会と接続しているからこそ、一見直接的には関係が浅いと思われるような体験も、大きなモチベーションや気持ちに直結するのだと思います。

お祭り本番、皆の心をひとつに

諏訪町一区の法被を着てついに本番を迎える筆者:右

会場に戻ると、そこはもうすでに熱狂の場と化していました。多くの人が集い、お祭りの開始を心待ちにしていました。みんなで準備した「たてもん」には火が灯り、日中とは違った姿をみせていました。多くの人々が紡いできた歴史に想いをはせ、みているだけで感動的でした。

夜になるとその輝きを増す「たてもん」

いよいよ「たてもん」を曳(ひ)く時間がやってきます。車輪もついていない約5tもある「たてもん」を動かすには、全員の心をひとつにすることが不可欠です。「せーの、こい!」という掛け声に合わせて一斉に縄を引っ張ります。地元の方もボランティアの方も、おそろいの法被を着て力を合わせて曳くことで共同性がさらに高まります。このとき、人が社会のなかで協力しながら生きているのだと、強く感じたのを覚えています。一人では絶対に動かせない「たてもん」も、そこにいる全員の力が合わさることで動き始める。隣で一緒に縄を引っ張る見ず知らずの人ともひとつの目的のために力を合わせる。そんな関係性に心強さと安心を感じました。人々の関係性が希薄になってきているといわれる現代ですが、共同性の生み出す力を再認識する機会となりました。

つながりが生み出す喜び

心がひとつになったみなさんと祭りの終わりに記念撮影

今回の「魚津まっつり応援団」への参加は、全員で息を合わせ、力を合わせ、心を合わせる、そんな体験を楽しむことができました。人のつながりが生み出す共同性の力は、一人では成しえない大きな目的を果たすだけでなく、その共同性のなかにある自分の喜びや安心を高めてくれるのだと体感しました。これからの仕事においても、共同性のもつ力を信じてウェルビーイングの高い働き方をしたいと思います。

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