北八ヶ岳の麓に位置する小海町は、四季折々に美しい姿をみせる山々と澄んだ空気に囲まれた高原地帯です。小海町は、地域特有の資源を活用しながら、町おこし「憩うまちこうみ事業」の取り組みを展開しています。鳶髙橋は、建築を軸にした町づくりや文化創造をおこなう企業として、2022年より協定を結び協力をさせていただくことになりました。

2023年2月17日に小海町で開催された、憩うまちこうみ協定を提携している企業を招いた交流会に鳶髙橋も参加させていただきました。今回は、鳶髙橋代表の髙橋が小海町の町長 黒澤弘さんを交えたワークショップのようすを紹介しながら、憩うまちこうみを支える中心メンバーである相原さんと浅田さんに小海町が目指す姿や課題についてお話しを伺いました。

前回の記事はこちら:ワーケーションモニターツアー「 Winter Workation in 長野県小海町」

小海町協定企業の皆さんとアイデアを出しあった「ゼロカーボン・ワーケーション」

ワークショップのようす

私たち人類や生き物の生存基盤を揺るがす地球温暖化は、豪雨や猛暑、生態系の異変といった自然災害の脅威をもたらしています。その原因となるのが、太陽から放出される熱を大気中に閉じ込め地表を温める温室効果ガスです。

ゼロカーボンは、温室効果ガスの排出量を可能な限り減らし、森林などによる吸収量を増やすことで、排出量と吸収量を実質ゼロにすることを意味します。脱炭素社会に向けた1人ひとりの取り組みが地球を守るということにつながっており、小海町も2050年にゼロカーボンシティをめざす挑戦を表明しました。

今回開催されたワークショップは、ゼロカーボンに向けた小海町の新たな施策、EV車の導入にあわせたテーマで話しました。「電気自動車、みなさんならどう使う?」という問いかけに対して各参加企業の取り組みを共有し、アイデアを出し、幅広い議論が繰り広げられました。

時間があっという間に過ぎるほど議論は白熱した

印象的だったアイデアは、EVで町案内をする案です。なんと、町長の黒澤弘さんが自ら運転しながら町のなかを案内していくという、驚きのアイデアです。

ディスカッションに積極参加する小海町長の黒澤弘さん

EVの活用方法として「カーウェディング」を取り入れる案もありました。こうしたEVの活用は、二酸化炭素の排出を防ぐだけではなく町全体の魅力向上につながるかもしれません。

小海町協定企業の皆さんをみていると「自分たちで町をつくるぞ」というような気持ちが伝わってきます。

憩うまちこうみ事業を支える2人が目指す小海町の姿

交流会の主催メンバーである憩うまちこうみ事業の浅田さんと相原さんにコメントをいただきました。

憩うまちこうみの浅田さん:左奥、緑セーター着用

浅田さん:ワークショップを通して率直に感じたのは、小海町は皆さんにとってまったく知らない遠い町であるはずなのに、参加者のみなさんがこの町を好きになってくれているということです。町のことを一緒に考えてくれるあたたかさが伝わってきて、純粋にうれしかったです。

今回のワークショップで「“小海町”でワーケーションをすることの価値と課題」をテーマにさまざまな意見をいただき、「余白」がキーポイントになりそうだと感じました。パソコンへ向かう忙しい日々のなかに、時間の余白、心の余白、考えの余白をつくることが、小海町でのワーケーションのひとつの価値になっていると考えます。

また企業様の意見として、長期滞在のニーズが多かったことは意外でした。企業向けの長期滞在できる施設も増えてきているなかで、小海町としても長期滞在できる仕組みを整え、ニーズにこたえられるといいなと思います。

将来、小海町は憩うまちこうみ事業のコンセプトでもあるように「みんなが憩える町」となり、関わってくれる人・関係人口の増加を目指しています。観光地として遊びにきてもらうというよりは、みんなにとって第二の故郷のような存在をイメージしています。ちょっと疲れたときとか、気分を変えたいときに、いつもと違う環境に身を置いて「あ~、なんか落ち着くな」と思ってもらえるような町であってほしいです。

憩うまちこうみのプロジェクトマネージャー 相原さん

相原さん:ワークショップにおいて印象的だったのは、業種が違う企業の方々の考え方や視点が知れたことです。普段はあまり顔を合わせない企業と行政が話をすることで、新たな学びを深めることができる。協定企業だからこそ事業に共感性をもって話ができた、本当にいい機会だなと思いました。

「ゼロカーボン・ワーケーション」を推進していくにあたっての課題は、施設などのハード面です。小海町のテレワーク施設「たぬきや」の規模感であったり、宿泊施設の休館日だったり、テレワークや研修できる場所が限られているのはやはり大きな問題です。私たちにとっても、もう少し提案できる場所があれば受け入れやすいなと思います。

今後、小海町は長野県にある市町村とは違った町になってほしいと思っています。冬のシーズンは松原湖が全面凍ってワカサギ釣りで賑わうのですが、人があふれ、道路が渋滞になるのは町の在り方として少し違うと感じます。自然をもとめ、人との暖かい交流をもとめてくる憩いの場としてなってほしいです。

革新がはじまった小海町

小海町役場と協定企業のみなさん

交流会で感じたのは、2050年に向けたゼロカーボンシティを目指す小海町の取り組みに対して積極的な協力をみせる町長さんと協定企業のみなさんは深い絆でつながっていることでした。

小海町は町内にある分譲地や使われていない別荘を活用し、交流拠点となる場づくりを推進しています。ただ旅を楽しむだけではなく、テレワークや自然を活用した体験、革新的なチャレンジで新たな体験の創出にも取り組まれています。

地域協定企業が集う交流会で感じたさまざまな意見や視点を通じて、私たちが直面する環境課題や働き方を再認識しました。今後も協賛企業として建築の領域から町と人をつなぎ、社会に接続した体験設計を構築していきたいと思います。

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