2022年から始動した「信州しめ縄飾り」プロジェクトは、神が宿ると伝えられた伊勢神宮、御新田由来のイセヒカリの稲穂を用いて長野の職人さんたちが1つひとつ手作りで製作しています。2023年は新たな作り手も加わり、さらなる進化を遂げた作品が東京の店頭に並びました。

新しい年が喜びにあふれた晴れやかな1年になることを願って、長野の農家さんからバトンを渡すように、世界にまで想いが届いていきました。

「時間や手間」に感謝の気持ちを込めて

しめ縄飾りのデザイン決めをおこなう、和かふぇよろづや女将の北村たづるさん:写真中央

信州しめ縄飾りプロジェクトの全体監督を務めるのは、長野県にある和かふぇよろづやの女将、北村たづるさんです。2023年も変わらず、1つひとつ丁寧に想いを込めて製作し、お客様にお届けすることを大切にしていくと明確な方針を固めていました。

北村さん「信州しめ縄飾りには愛情と手間暇が込められています。しめ縄飾りの素材には、農家さんが育てた稲穂を用いているため、素材の確保1つとっても時間を要します。加えて、縄を綯(な)うためには刈った稲をきれいにして湿らせる行程が必要となります。しめ縄飾りを彩る水引を手作りするのも1つにつき1時間以上は必要になります。

昔のかたはゆっくりと経過する時間のなかで1年間無事に過ごせたことに感謝しながらこうした年中行事をされていたのではないかと思うと、しめ縄づくりの手間暇がとてもすてきな時間に思えてきます。時間をかける意味を感じ、東京で購入をしてくださる方々の健康やすてきな1年を願っているとますます楽しくて豊かな時間に思えてくるんです。」

刈った稲を綯うための下準備

ひとつのしめ縄を仕上げるのには1時間以上の手間がかかっており、素材が手に入るまでを考えると農家さんが田植えをしてから1年ほどの歳月が経過しています。しめ縄飾りに関わる人や手間暇は相当なものになりますが、そうした過程を楽しんでいる様子が製作現場からも伝わってきます。

「これがお米なの?」初めてみる稲穂やお正月飾りに飛び交うWow!

積極的にお客様に商品の説明をおこなう販売メンバー

今年はチラシや動画を用いて海外の方々に向けた発信も積極的におこないました。そのおかげもあってか、販売当日は例年に増して海外観光客がお店に見られました。

店頭で6日間販売に携わってくれたスタッフたちは、海外の方々が藁に実った稲穂をみて「これがお米なの?」と驚きの表情を浮かべていた様子が印象的だったと話します。

しめ縄飾りは、新しい年の年神さまを迎えるために家の玄関先に飾るとともに、神棚や、古くは火の神様、水の神様など日常お世話になるすべての場所にも飾っていました。海外から来た旅行者たちは、こうした日本独自の文化にも興味を持ち「信州しめ縄飾り」を購入されていました。「これからタイに帰るので自分の家に飾ってみます。いいお土産になりました。」と笑顔を見せて帰って行きました。信州から生まれたしめ縄飾りがアジアやヨーロッパなど、多くの世界に届く形となりました。

信州のしめ縄飾りが生んだ田植え体験への関心

店頭で並んだ「信州しめ縄飾り」

海外のかたに限らず、プラスチックを使わないしめ縄飾りに関心を持つ人は多く、通りすがりの方々は足を止め作品を手に取っていました。店頭販売を手伝ってくれていた大学生のメンバーも、天然素材のしめ縄飾りに興味をもっていたようで、「一般的なものよりも魅力的で、特に水引は手作りならではの繊細さを感じました。直接皆さんにみていただきたいです。」と、信州でつくられたしめ縄飾りに魅力を感じている様子がみられました。

「手の込んだ、作品に同じものはなく、どれも味がありますよ。」と、熱意をもってお客様に作品の魅力を紹介していた販売メンバーがいます。彼女は、稲の栽培から水引まで全て手作業でつくっていたり、1つのしめ縄をつくるまでにたくさんのかたが関わっていたりと、製作過程を知ったことでより価値を感じていると語ってくれました。

販売メンバーと「信州しめ縄飾り」プロジェクトについて談笑する北村たづるさん

販売メンバー「信州しめ縄飾りを通じて、長野と東京をつなぐきっかけに携わっているのがやりがいに感じました。ぜひ田植えもやってみたいです。」

手間暇かけて製作された作品が販売メンバーの気持ちをも動かし、プロジェクトの新たなヒントになった瞬間でした。

信州しめ縄飾りを通して実感するストーリー

東京を拠点に昭和初期から毎年手作りでしめ縄飾り、門松づくりをしている株式会社鳶髙橋。代表の髙橋慎治は、今年も新宿でお世話になっている店舗に一軒一軒足を運び、あいさつとともにしめ縄飾りを届けていきました。

髙橋「今年も信州しめ縄飾りプロジェクトを通じて長野の仲間たちとすてきな作品を届けられたことがとても幸せです。」幼いころからプラスチック製品が多く使われているしめ縄飾りに疑問を持っていたという髙橋は、天然素材でつくられたお正月飾りを手にして喜びの表情を浮かべました。

髙橋「長野の農家さんと田植えから始めてしめ縄をつくる、それを長野の仲間が東京に持ってきて幸せを願う、今年は昨年以上にインバウンドの人たちにお渡しできて、私たちの想いが世界へと飛び立っていったのが感動的でした。」

お客様に届けるしめ縄飾りを最後まで確認する代表髙橋

髙橋「海外の方々は日本の文化に対して関心が高く、作品の美しさ、1つひとつに込められた想いを聞いて””素晴らしい”と感想を残してくれました。しめ縄飾りに込められた気持ちが伝わったことが何よりも価値があると思います。」

プロジェクトメンバーに今後の展望を聞くと、口をそろえて「体験」に言及をされていました。田んぼで人手が足りないときはみんなが応援に行き、東京で販売するしめ縄飾りが足りなくなれば長野からお届けに行く。みんなが行き来できるような形になれば、しめ縄飾りを通じて日本の文化も発信することが可能になります。

和かふぇよろづやのスペースにて行うアイデア出しは時間を忘れて盛り上がることも

髙橋「プロジェクトの振返りや打ち合わせは長野県千曲市にある和かふぇよろづやでおこなうのですが、地域の産物やおいしい食事を囲みながら語り合う会議はとても和やかです。和かふぇよろづやならではの開放された雰囲気のなか、各々の想いを共有することで普段は言いづらいことも伝えあうことができて、課題さえも前向きにとらえ、全員で協力して最後まで走り切れました。」

さらに団結が深まったプロジェクトメンバーたちで来年度おこなうのは、田植え体験からプロジェクトをスタートするなど、より長野や農家さんを身近に感じられる企画だそうです。2024年のプロジェクトも辰年にあやかり上昇気流で発展していきそうです。

YouTube:【信州しめ縄飾り】長野から東京へ、作り手が1つひとつ手作業で制作した「信州しめ縄飾り」をお届け@お飾りセレクトショップ

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